Saturday, March 8, 2008

女性とマイノリティに向けられた暴力を黙認する日本政府に抗議する

抗議声明

日本軍慰安婦に関する貴重な歴史資料を破壊しようとする歴史修正主義者の暴力に抗議し、女性とマイノリティに向けられた暴力を黙認する日本政府に抗議する。

1月26日、東京西早稲田にあるアクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)が、愛国を叫ぶ暴力的政治集団による襲撃を受けた。
この「女たちの戦争と平和資料館」は、旧日本軍がアジア太平洋地域で行った、日本軍慰安婦(戦時性奴隷)制度を筆頭とする女性に対する犯罪行為を取材し続けた女性ジャーナリスト・松井やより氏の遺志を受け継いで実現された、女性の人権と平和をテーマとした資料館である。
この暴力集団は西村修平と名乗る男性に率いられた二十余名で、日の丸を掲げ、拡声器を使って故松井氏を誹謗中傷し、資料館の破壊を叫びながら資料館入口を占拠し、不法な侵入を試み、訪れた人々を威嚇して自由な資料閲覧を妨げ、資料館の活動を妨害した。彼らは以前から日本軍慰安婦問題を追究する女性たちや在日コリアンを「反日勢力」と断定し、公然と威嚇・攻撃を予告していた。そして、今回の襲撃はインターネットの掲示板で予告され、同調者を募って実行されたものだった。
さいわい資料館は、事前に襲撃計画を察知した関係者・支援者たちの献身的な守備によって、かろうじて守られた。しかし、この事件がもたらした衝撃は深刻である。それは、この小さな資料館を運営する女性たちやマイノリティにとって、生命の不安を抱かせるのに十分なほど暴力的であった。さらにそれは、自由と人権に対するきわめて深刻で重大な攻撃であり、日本国内の問題だけにとどまらず、女性に対する戦時性暴力の根絶に取り組む国連人権理事会をはじめとする世界の人道と良心に対する挑戦と攻撃と言うべきものだった。
この襲撃を行った暴力集団は、他にもドメスティック・バイオレンスから女性を守るためのセミナーや講演会の開催を妨害するなど、女性の人権擁護に対する敵対行動を行っている性差別主義団体である。日本政府は、彼らの常日頃の活動を知りながら、また彼らがインターネットで今回の襲撃を予告していたにもかかわらず、有効な警備を怠り、襲撃者の思うままにまかせた。この日本政府の態度は、愛国主義を標榜するテロ集団が勝手気ままに横行する日本の現状に対する恐怖感と無力感を一般民衆にいだかせようとしている。
日本政府は、公式的には旧日本軍による戦時性奴隷制度としての慰安婦の存在を認めてきた。
しかし他方、国内においては、慰安婦問題の追究を外国勢力による反日的攻撃であるとする盲目的ナショナリズムを煽る一部のメディア・プロパガンダに有効な反論をしないばかりか、むしろ前内閣総理大臣・安倍晋三の言動に典型的に見られるように、そのような盲目的ナショナリズムと歴史修正主義に積極的に同調さえしてきた。そうした日本政府のダブルスタンダードな態度の結果、今回の襲撃を企てたような暴力集団は、政府による暗黙の承認を背景に、日本国内の女性人権団体やマイノリティに攻撃を集中させている。
彼らが公然と民族差別を叫び、女性の人権を冒涜しながら、不法な行動を自由に繰り返すことができるのは、彼らがそのような行動を繰り返しても、政府が正当な処罰を行わないことを知っているからだ。
日本では、最近、このような愛国主義的団体の不法な攻撃や妨害によって、基本的人権が脅かされる事態が続いている。一例をあげれば、学校教員の労働組合である日本教職員組合の大会が、天皇中心主義教育への回帰を主張する愛国主義団体の妨害によって開催不能になるという事件が起きている。
今回の襲撃事件は、日本社会を覆っているこのような一連の事態の一部であり、旧南アフリカにおけるアパルトヘイト、公民権運動以前のアメリカ合衆国南部における人種差別、1930年代のナチス突撃隊によるクリスタルナハトの悪夢を彷彿とさせるものだ。
無法者たちによる女性やマイノリティに対する攻撃は、それを意図的に看過する政府の不作為によって、やがて広範な人権侵害へと発展するだろう。それを見過ごすことが許されないことは、ジェノサイトと暴力に明け暮れた二十世紀の歴史を知る者にとって自明のことではないだろうか。
私たち、日本社会で暮らす女性やマイノリティ、そして市民は、この襲撃事件の事実をひろく世界に訴える。そして、そのような不法行為を黙認する日本政府に対して、人権と正義を価値とする世界中の良心的な人びとが抗議の声をあげることを要請するために、ここに抗議声明を発するものである。

2008年3月3日

info@hisabetsunikkei.org
www.shinsugok.com/research/index.html


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